2010年3月7日日曜日

日本と日本のイルカの行く末 5 <ザ・コーブ>

実は10日程前に『ザ・コーブ』のスクリーニングがボールダー市内で行われました。映画上映後、会場に来るクルー達との質疑応答があるというので、すでにこの映画を2回観ていたのですが興味があるので行ってみました。実際に太地町に行ったクルーにいろいろ質問をしてみたかったのです。

会場に集まったのは多くて100人強。私はそれまでDVDでしか観ていなかったので、公共の場でこの映画を観るのは初めて。映画上映中に日本人の私が若干不機嫌になる場面(イルカ擁護派の私でも、多少ムッとくる場面はあるのです)で、後ろの人から笑い声が上がったりすると、受け止め方の違いをひしひしと感じながら3度目の鑑賞をしたのでした。

映画の後にステージに登った4人のクルー達に盛大な拍手が送られました。まず彼らが体験談と感想を簡単に述べた後質疑応答へ。さすがアメリカ人、あちこちでぱっと手が挙りました。質問の内容も「映画公開後の日本政府の反応は?」とか「日本で他にもイルカ漁をしている土地はいくつかあるようですが、なぜわざわざ太地町へ?」と、なかなかまともなものが多く、クルー達からもこの映画が太地町に与える影響を心配したコメントもありました。

10人程が一通りの質問を終えた後、やっと私にも発言できるチャンスが回ってきました。自分が日本人だということを述べた後、クルー達が撮影前にどのように太地町にアプローチし、どのような交渉をし、そしてこのような結果(強行な撮影方法)になってしまった経緯を尋ねてみました。あと、会場にいるアメリカ人に、日本にはアメリカほどアクティビズムが存在せず、自国批判にも繊細なことも強調しました。

クルー達から、立ち入り禁止区域に入る許可を取ろうとして失敗したことや、言葉の壁の苦労などが説明された後、私を驚かせる事実が浮上。なんと通訳が始めの2週間しかつかなかったと言うではないですか。そして「多分太地町の人達には、私達が実際に何をしているかはわからなかったと思います。」という発言。

さすがの私も、「うーん、これでは地元との間に亀裂が生じても仕方がないかもしれない」と思い始めたのでした。当然のごとく、更にこの舞台裏を知りたくなったので、その後30分ほどクルー達と会話をし、結局、その1人で2006年から2年の間に6回太地町に行ったというプロダクション・コーディネーターに近々直接会って話を聞くことになりました。

実はこの映画を作ったOPS(海洋資源保護協会)はボールダー市内に拠点を置く団体で、このスクリーニングの時に「ボールダーに是非オスカー像を持ち帰りたいと願っております」と言っていましたが、今夜それが現実となり、私自身も驚いているところです。

クルーの話を聞いた後、その結果はまたお知らせしたいと思います。

9 件のコメント:

  1. この映画、今日アカデミー賞でドキュメンタリー長編賞をとったみたいよ。これで日本でもっとこの映画の存在を知る人が増えるのでは??と思う一方で、先ほどニュースで見た複雑な気持になっている太地町住民の困惑した表情がなんだか忘れられない・・。

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  2. わぁ、実際に生の声がきけるなんてスゴイね。是非、きかせてね。これからアカデミー賞の授賞式の様子をまずみてみます。

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  3. miki妹どの - ついに日本のメディアがこの映画のことを大々的に取り上げ始めたね。アカデミー賞にノミネートされたことはほとんど話題になっていなかったので、ここが運命の分かれ目だったのだけど、確かに太地町に対しては苦しい結果になってしまいました。

    これから更に考えさせられることが表に出ると思うけど、できるだけ双方に公平な情報が流れるといいな、と思っています。その上でmi-ちゃんも自分でこの問題に対する判断をしてください。

    Yukko - すでにこの映画を観ているので、日本でのニュースを見ての意見を聞かせてね。

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  4. 僕も実はいうと、2週間ほど前にレンタルして見た所で、アカデミー賞を受賞したところも見ました。
    僕はどちらかというとむっとするよりも、なぜそこまで隠す必要があるのかというのが不思議でしたね。
    別に否定も肯定もしませんが、そこまでしないといけないのか?という疑問はありますね。
    それと、もし食卓に上がったらもちろん食べます。
    ただそれが安全なものなのかどうかは解りませんが・・・
    そうそう、僕の知り合いが養鶏場で働いてるのですが、その人が言ってました
    「卵のときにすでに成長ホルモンを直接する」って・・
    この鶏の寿命は生まれてから16週間、それ以上たつと心臓破裂だったかな?で死ぬそうです。
    知ってました?
    もちろんこれも食卓に上がればもちろん食べますが、どんなもんでしょう・・・

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  5. No.4にコメントしたけれど、初夏の公開版には太地町のコメントが字幕として加えられて、漁師の人たちの顔にはモザイクが入るそうですね。映画を観て映像の力を思い知りましたが、それで論点がぼけて感情論になってしまわないといいな。日本側が感情だけで立ち向かっているように見えましたが、通訳なしでの強行撮影も地元の人を余計刺激したのかも。太地町の観光大使の人によると地元ではイルカの肉は食べない(捕獲は?と疑問は残りますが)と言っていました。ともかく『今後くじら漁だけに頼っていかなくてはならない町には未来はない』と話していたのが印象に残りました。
    クルーの人との話、楽しみにしています。

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  6. mapleさん-「なぜそこまで隠す」という点、私も1回目に見た時に同じ感想を持ちました。「信念を持ってやっていることなら、相手を拒絶するだけでなく、相手を納得させる主張をしなければならないのでは?」と思いましたが、そうすると文化的背景などが絡んで来て、思うように容易ではなさそうです。

    次はぜひ「Food Inc.」を見てください。これもアカデミーの候補になっていたドキュメンタリーです。その中であるブロイラーが出てきますが、そこにいる鶏はぎゅうぎゅう詰めにされたところで運動なしで飼育されるため、2,3歩歩くと尻もちをつくような悲惨な状態でした。

    私は鶏肉はもちろん卵もcage freeでホルモン剤などは全く使っていない、と表示されたものしか購入しませんが、アメリカでもこの表示がどこまで信頼できるかが問題になっています。free rangeが実は1日5分間だけ、なんていうのもあるみたいですから。

    そんなことを考えると何も食べれなくなるので、賢い消費者になる努力をしながら買い物をしています。

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  7. imakokoさん-日本でこの映画が公開されると聞いた時、町の人の顔は隠した方がいいな、と私も思いました。なのでスクリーニングの時に質問をしたところ、そのように彼らも言っていたのでほっとしていました。

    ところでその時に聞いたのだけど、学校給食にイルカ肉はやめるべきだ、と言っていた太地町議会議員の人は、その後町に居られなくなり家族でよその土地に引っ越されたそうです。OPSがその資金を援助したんだって。

    そういう話を聞くと、日本社会の掟の強力さを痛感します。この問題は日本社会の構造から考えなくてはならないということだと思いますが、政府が動けば何かが変わるものでしょうか?そんな思惑もあり、この映画は水銀問題から政府に働きかけているのではないかと思います。

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  8. 映画で発言した人が引っ越さなくてはならなかったとコメンタリーで知りましたが、OPSが資金援助をしていたんだ。日本だけでなく社会の構造が改革や進化をとどまらせているケースがいかに多いか。考えさせられます。

    そういえばEarthlings観た?監督のシホヨス氏が今まで観た映画の中で一番パワフルだったというドキュメンタリー。過酷な映像が多いので迷っていたけれど図書館で借りる決心をしました。しっかり受け止められるかちょっとこわいけれど。

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  9. そう food.inc 実はまだ見ていないのだけれでも、知り合いのアーティスト(彼女はいま陶器を作っています)にこれ見てみてって進められたところでした。
    そこで僕もこの映画の事を伝えたのですが、次に会う時どんな会話になるのやら・・・

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