思えば、人生で初めて自分で買ったカセットテープはこれでした。小学5年生の時だったと思います。記憶では1人で自転車に乗って隣町の西友へ行き、このテープを買ってきました。
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私の音楽の好みのベースは この時点で既に確立されていた?! |
先週の坂本龍一さんの訃報に驚き、想定外の喪失感から抜け出すのに何日もかかってしまいました。
『雷電(ライディーン)』をYouTubeで探し、初めて聴いた時の衝撃も40年以上ぶりに思い起こしました。このテープに収録されていた、ヴォーカル入りの『東風(Tong Poo)』も当時私のお気に入りだったなあと懐かしくなりました。
私はここを起点に、デヴィッド・シルヴィアンというイギリス人ヴォーカリストを知り、彼が率いる『JAPAN』というニューウェーブ・バンドにはまり、中学生の時からブリティッシュ・ロックを好んで聴いていました。記憶の彼方にあったこのカセットテープとの出会いが、改めて考えてみると結果的に日本を出ることになった今の自分に繋がっているような気がしてきて、昔の記憶に思いを巡らせ始めました。
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YMOと言えば、こんなヒット『君に胸キュン』もありました。←このビデオの”無理やり踊らされている/やらされている感”(特に細野さん)が何とも言えないのと、3人が若くて思わず涙ぐみそう(; ;)
坂本さんは、こんな楽曲『くちびるNet Work』(岡田有希子)も提供していたのを覚えていらっしゃいますか?
私が坂本さんのピアノに興味を持ったきっかけは多分『戦場のメリークリスマス』です。やはり名曲はいつ聞いても胸に響きます。2001年にブラジル人夫妻とユニットを組んで『CASA』をリリースした頃はたまたまロンドンに住んでおり、近所のコンサートホールで彼らのコンサートがあった時には歩いてコンサートを聴きに行くという幸運にも恵まれました。(『O Grande Amor』/ Ryuichi Sakamoto & Jacques e Paula Morelenbaum )
2013年にこのブログで、絶対音感について書いたことがあります。その時に書いたのですが、自分の不思議な(唯一の?)能力=音感について意識するようになったのは、NHKの番組に出演していた坂本さんの話を聞いていて、「そうか、これは私だけではないのか(偉大な音楽家と自分を一緒に括るのは恐れ多いとは思いますが)」と思ったのがきっかけでした。
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たまたまこの訃報を知る前日に、明治神宮外苑再開発問題の話をしていました。開発に伴い伐採予定の樹木は合計約3000本ということで、どうしてこのような事業が許可されて進められるのかが良く理解できないと、実家の母と話していたところでした。
もしかすると、都市開発や新たな商業施設ができることを歓迎する日本人が少なくないのかな、とも。人間のくさりでの抗議活動は、日本人ではなくアメリカ人の呼びかけによるものだったということも気になりました。
実は私が今住んでいる隣のブロックがディベロッパーに売られ、そこに老人ホームを建設することになりました。ここはボールダー市の西端で、その西側からは市が管理するオープンスペースになっており、自然とダウンタウン両方に近いロケーションです。この工事を始める前の何年もの間、地域住民・ディベロッパー・市の三者で度重なる渡る話し合いが行われ、当初提出された計画よりも建物の高さを下げる、敷地内の建物のレイアウトと景観を考慮したデザイン、伐採する木に関する条件等の交渉が行われました。最初にこの土地を買ったディベロッパーは住民からの反対に耐えられずに撤退、次のディベロッパーがやっと施工に辿り着いたという経緯があります。その間約6年でした。
この外苑再開発問題もそのうち風化してしまうのだろうと思いますし、一旦始まってしまった工事の計画を変更することは難しいでしょう。今まで日本では、様々な社会問題が一過性のファッションの流行のように扱われて来た気がします。それに比べて欧米の市民団体やジャーナリズムはかなり執拗です。ただし、アメリカでもどうしても変えられない法律は銃規制です。どこでも政治と切り離せない問題があるわけですね。
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先週は坂本龍一さんに関する記事が次々と出てきて、ついつい目につくものは全て読んでしまいました。社会問題や環境問題に積極的に声を上げていらしたということを今になって知り、本当に惜しい人を亡くしたとどんどん悲しくなり、しばらく坂本ロスに陥っていたわけです。
そんな風に過ごしている間に、前回書いた痛くて歩けなくなっていた足はほぼ元に戻っていました。
東京都都知事 小池百合子様
突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。
率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。
私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。
いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。
東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。
あなたのリーダーシップに期待します。
2023年2月24日 坂本龍一
(4月3日付朝日新聞より)