『The Cove』がアカデミー賞の候補作になりながら、日本語で検索するとそのニュースがほとんど出てこないのはなぜでしょうか?
このドキュメンタリー映画は、60年代に有名になったイルカ「フリッパー」のトレイナーだったリチャード・オバリー氏が率いるアクティビスト・グループが、日本でのイルカ追い込み漁の実態に迫るという内容で、その舞台は和歌山県太地町。監督はナショナル・ジオグラフィック誌の元写真家で、現在OPS(海洋資源保護協会)のエグゼキティブ・ディレクターのルイ・シホヨス氏。
この映画が昨年7月末から上映された欧米諸国では当然のごとくイルカ漁への批判が高まり、日本国内では「地元民の感情を踏みにじった隠し撮り映画」「ジャパンバッシングだ」と非難囂々。11月の東京国際映画際では、太地町が「名誉棄損」だとして上映中止を申し入れたものの、主催者側は「表現の自由」を主張。海外ですでに多くの賞を受賞していたこともあり上映されました。
私も12月末にこのDVDを観た後この話が気になり考え続けていたところ、1月に米放送映画批評家協会の2009年ドキュメンタリー賞を受賞。そして先日のアカデミー賞候補のニュース。日本ではまだ配給会社が決まらない様ですが、今後世界中の人が日本人の私ですら最近まで知らなかった太地町の名を知ることになりそうです。
この映画の始まりは、外国人クルーが太地町に潜入し警察に尾行されながら撮影を進めるシーンから始まります。それまでの背景を知らずに見ると、自分の家の中に土足で入られるような不快感を覚えます。地元の警察が相手に合わせてわざわざ英語で質問しているのに、その応対はそっけなく敬意を感じない。しばらくケヴィンに説得されながら映画を見続けました。
ところで、日本が世界中のほとんどの海洋公園や水族館、そしてイルカと一緒に泳ぐ施設へイルカを供給し、このアクティビティーの中心になっていることをご存知でしたか?実は私は日本でイルカ漁が行われていることすら知りませんでした。日本では長い間イルカは「魚」として扱われてきたため、今だにイルカ漁と言われるようです。毎年23000頭のイルカが日本で殺されているというのです。
音に敏感なイルカ達を、騒音を出す何隻もの漁船が囲い込み入り江に追い込む。イルカのトレーナー達がやって来て欲しいイルカを選び、水族館に売られて行く。残ったイルカは驚いたことに一頭一頭モリで突き刺され、苦しみながら死んで行く。そしてその肉が市場に出回るというのです。映画ではその肉は「鯨」と表示されて店先に並んでいると説明しており、そう言われれば「イルカ肉」なんて見たことがないな、とも思う。
しばらく見続けていると、いろいろと疑問が湧いてきました。一番大きな疑問は、どうして水族館に売られなかったイルカを逃がしてやれないかということ。
この話は長くなりそうなので、次のポストに続けたいと思います。